育児休業給付金の受給条件とは?パートや派遣でももらえるって本当?
非正社員だから育児休業給付金はもらえない!と最初からあきらめてはいませんか?
友人のHさんは大手メーカーで、事務の仕事を務める派遣社員です。
現在の派遣先では契約が8回更新され、もうすぐ2年が経とうとしています。
仕事にも慣れやりがいを感じていた頃、プライベートでは妊娠7週目であることがわかりました。
いつかはママになりたい!と思っていたHさんにとって、妊娠自体は喜ばしいことではありましたが、Hさんの旦那さんはフリーランスのお仕事で収入は不安定。
自分が仕事を辞めてしまったら、生活できなくなるのでは?と、不安を感じてしまったそうです。
Hさんは辞めることを前提に考えてしまっていますが、実は派遣社員やパート(アルバイト)といった非正社員の方も、育休を取得することができます。
さらに、育休中には育児休業給付金がもらえるので、Hさんのように生活に不安な方は、ぜひこの制度を利用したいですよね!
ですが、給付金をもらうにはいくつかの条件を満たさなければいけない上に、現実的にはそう簡単には行かなかったりします。
この記事では、パートや派遣社員の方が、育児休業給付金を受給する方法を具体的にご紹介します!
非正社員が育児休業給付金を受給するには?
産後の育児にともなうお休みには「育児休暇」と「育児休業」があります。
前者が会社独自の制度で、後者が法律で定められた制度です。
この違いについては、次の記事で詳しく説明しています。
「育児休暇」とは?「育児休業」とは?混同されがちな「育休」について教えます
この記事でお話しするのは、後者の「育児休業」期間にもらえる育児休業給付金についてです。
育児休業給付金とは、国が運営している雇用保険から、育児休業中の労働者に対して支給されるお金です。
最初の半年間は給料の67%、半年以降は給料の50%が支給されます。
もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を読んでみてください!
育児休暇中は給料がもらえないって本当!?年収やボーナスはどうなるの?
育児休業給付金を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
この条件さえクリアできれば、パートや派遣社員といった非正社員の方でも、育児休業給付金も受給することができます!
育児休業給付金の受給条件
育児休業給付金の受給条件は、次の5つです。
- 雇用保険に加入している
- 育休開始前の2年以内に、11日以上勤務している日が12か月以上ある
- 育休中に育児休業開始前の賃金の80%以上にあたる賃金が支払われない
- 育休期間に働いている日数が1カ月で10日(10日を超える場合は80時間)以下である
- 育休終了後に退職する予定がない
これは正社員の方と全く同じです。
育児休業給付金は雇用保険から支払われるものなので、「①雇用保険に加入している」は大前提になります。
派遣社員の方はここでひっかかることはほとんどありませんが、パートの方だと雇用保険に未加入の場合もあるので、最初に確認しましょう!
週に20時間以上働いている場合は、雇用保険の加入が義務付けられているので問題ないかと思います。
2年以内にパート先が変わっていたとしても、
- 離職票を失業保険で使っていない
- 退職してから現職入社までの期間が1年未満
の2つの追加条件を満たしていれば大丈夫です。
詳しくはこちらの記事を読んでみてくださいね。
転職者が知っておきたい育児休業給付金の受給条件とは?完全月って何?
給付金を受給する手順
自分が育児休業給付金の受給条件を満たしていることがわかったら、育児休業を取得したい旨を勤務先に伝えましょう。
派遣社員の方は派遣先ではなく、登録している派遣会社に相談します。
育児休業を取得することは働く人の権利ではありますが、あなたが休むことで職場に負担が生じることも事実です。
自分の権利ばかりを主張するのではなく、同じ職場で働く人のことを気遣いながら話をした方が印象良く伝わりますよ。
勤務先が育児休業の取得を承諾すれば、育児休業給付金の申請手続きを進めてくれると思います。
現実的に育児休業給付金を受給しているケースとは?
パートや派遣社員の方でも条件を満たせば、育児休業給付金を受給できるとお伝えしました。
しかし、現状では非正社員の多くが妊娠・出産を機に仕事を辞めています。
平成30年の内閣府の調査では、正社員の70%が育休後に仕事に復帰しているのに対し、パート・派遣社員は25%でした。
給付金を受給した人にいたっては、非正社員の場合わずか10%です。
育児休業を取得できる権利があるとはいえ、育休とは別の理由をつきつけられて解雇されたり、辞めるように圧力がかけられたりすることが多いようです。
では、実際に育児休業給付金を受給しているのはどんなケースでしょうか?
私の友人のAさんは、百貨店で8年間パートとして働いています。
半年前に子どもが産まれ、現在は育児休業中で給付金をもらいながら生活しているそうです。
そんなAさんの話をもとに、パートが育休を取得している例をご紹介します。
女性が多い職場で働いている
女性が多い職場は、産休・育休の前例があるため育児休業給付金を受給しやすくなります。
Aさんの職場は百貨店の婦人服売り場なので、従業員のほとんどが女性です。
そんな職場では産休や育休を取ることは「お互い様」なので、Aさんが妊娠を報告した際はみんなから祝福してもらえたそうです。
産休育休実績ありのアルバイト情報を探してみると
- 介護職
- 保育士
- 看護師
といった、女性の割合が高い専門職の募集がたくさん見つかります。
ただし、女性が多い職場だからといって、必ずしも育休をとりやすいとは限りません。
中には妊娠の順番という暗黙のルールが存在するところもあります。
先輩よりも先に妊娠すると職場で肩身の狭い思いをして、仕事を辞めることになるそうです。
新しい命を授かるという喜ばしいことなのに、悪者扱いされてしまうなんておかしなことだと思います。
ですが、職場の人間関係に対する配慮が足りないという気持ちも理解できます。
問題なのは、育児休業を自由に取得できない職場の業務体制です。
育休を取得できるかどうかは、職場環境がポイントとなりますね。
代わりの人材がすぐに見つからない
勤務歴が長く、仕事のスキルが高い人の代わりを見つけるのは、簡単なことではありません。
Aさんは努力家で、8年間お客様とのやりとりをノートにまとめながら、接客方法を研究してきました。
その結果、今では婦人服売り場のエースと呼ばれる存在になっているそうです。
エースが急に辞めてしまったら大変ですよね。
Aさんのような優秀な人材をまた一から育成するのには、お金と時間がかかります。
- 勤務歴が長い
- 職場の人からの信頼が厚い
- 特別なスキルや資格を持ってる
そんな方は、職場から何としてでも残って欲しい!と思われているのではないでしょうか。
育児休業給付金の申請はスムーズにいきそうですね。
勤務先が育休取得に難色を示すときは?
Aさんのケースとは反対の
- 勤務先に育休の前例がない
- 代わりの人材がすぐに見つかりそう
といった場合になると、育休を取得することに難色を示されるかもしれません。
ですが、そこで諦める必要はありません!
育児休業を取得することは、働く人の権利として法律で定められています。
勤務先に育休の取得を認めてもらえるように、次の方法を試してみましょう。
仕事に対する熱意をアピールする
仕事に対する熱意が伝われば、育休後も働いて欲しいと思われるかもしれません。
Hさんは育休をとりたい旨を派遣会社に相談した際、担当の方から
「育休中に派遣先との契約が切れて継続雇用できないので、育休を認めることができない」
と言われたそうです。
それに対してHさんは
「育休明けに働けるのであれば、現在の派遣先で復帰することにはこだわりません!新しい派遣先でも今以上に頑張らせていただきたいと思っています」
と答えました。
Hさんの仕事に対する熱意が伝わったようで、担当の方は前例が少ない中、Hさんが育児休業を取得できるように働きかけてくれたそうです。
育休明けに、新しい派遣先で働くことを不安に感じるかもしれません。
ですが、もともと働いていた職場に戻る場合でも、組織や上司が変わっていたり、仕事が別の人にわたり居場所がなくなっていたり、と苦労することは多いようです。
自分の思い通りの働き方ができないことを嘆いても仕方ない。
また一から頑張れば、きっとやりがいのある仕事を任せてもらえるはず!
と、どんな時でも前向きに仕事を頑張ることができる人なら、職場から育休取得を後押ししてもらえると思いますよ。
総合労働相談コーナーを利用する
「うちには育休の前例がないから難しいね。ほかの人はみんな辞めているよ?」
と育児休業を取得することに対して、まともに取り合ってくれないこともあると思います。
そんな時は、総合労働相談コーナーを利用してみるのも一つの手です。
相談料は無料です!労働問題に詳しい専門家が力になってくれますよ。
育休取得に理解のない職場の場合、もしかしたら復職後も育児ハラスメントで苦しむことになるかもしれません。
育児ハラスメントについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
働くママを襲う育児ハラスメント!その原因と被害にあった時の対処法
今後もずっと働き続けたいと思える職場なのか、一度ゆっくり考えてみてくださいね。
まとめ
パートや派遣社員の方でも
- 雇用保険に加入している
- 育休開始前の2年以内に、11日以上勤務している日が12か月以上ある
- 育休中に育児休業開始前の賃金の80%以上にあたる賃金が支払われない
- 育休期間に働いている日数が1カ月で10日(10日を超える場合は80時間)以下である
- 育休終了後に退職する予定がない
の条件を満たせば、育児休業給付金を受給することは可能です。
しかし現実的には、非正社員のうち育児休業給付金を受給しているのはわずか10%程です。
実際に育休を取得しているのは、女性が多い職場で前例があったり、代わりの人材が見つかりにくい場合となっています。
もし、勤務先が育児休業の取得に難色を示すようでしたら
- 仕事に対する熱意を伝える
- 労働相談センターなどの専門機関に相談する
といった方法を試してみましょう。
パートや派遣の仕事だから楽!なんてことはないと思います。
育児だけでも毎日ヘトヘトになるくらいハードなものです。
育児休業給付金は、そんな仕事と育児の両方を頑張ろうとしているママとパパのためにある制度です。
パートだから、派遣だから受給できないと思いこまずに、どんどん制度を利用していきましょう!